『利己的な遺伝子(旧題『生物=生存機械論』)』(リチャード・ドーキンス)の感想

2007年10月 2日 02:20 『利己的な遺伝子(旧題『生物=生存機械論』)』(リチャード・ドーキンス)の感想

最近、何故か急に地球上の生物の進化というものに凄く興味を持ち始めました。

きっかけは多分、ニコニコ動画でその手の科学物のTV番組の動画を何本か見たことからかな、と思います。

今ではフィクションの世界でもノンフィクションの世界でも「生物は遺伝子によって仕組まれた通りに行動している」というような感じの考え方は一般的になっていると思うんですが、その辺りの詳しい理屈というか仕組みというか、そういうものをちょっと勉強してみようかな、なんてことを考えまして、色々とググってみました。

するとどうも、この『利己的な遺伝子』という本が、とりあえず基本を勉強するのに丁度良いらしい、ということがわかりました。
著者のリチャード・ドーキンス氏は、進化論関連の著作では非常に有名な人らしい。

そんなわけで、図書館で借りてきて、数週間かけて読了しました。
正直、一読したくらいでは、本作の濃い内容を全然消化し切れていないんですが......。

とりあえず、著者のリチャード・ドーキンス氏は非常にくどい文体の人みたいで、なかなか文章の意味を理解するのが難しかったんですが(もしかしたら訳の問題も多少はあるのかな?)、それでも専門家じゃない人にわかるように、出来る限り易しく解説してくれているな、というのが第一印象でした。

「遺伝子」とか「進化論」とかの複雑な仕組みを、ストレートに表現すれば専門用語の山になるんでしょうが、とにかく回りくどく、色んな比喩を交えて、そういった専門用語を使わずに説明してくれたおかげで、楽しみながら読むことが出来ました。

読んでいて個人的に興味深かったのは、以下の三点。

血縁淘汰の考え方

何故、肉親は本能的に他の肉親を守る傾向にあるのか。これを単純な算数でわかりやすく説明されてました。
親と子や兄弟との間には、共通の遺伝子が50%含まれていて(これよりも近いのは基本的には100%同一の遺伝子を持つ双子だけ)、他の同族よりも、親子や兄弟に対して利他的な行動を取ることが、遺伝子にとってメリットがある。
さらに、親子や兄弟間の力や寿命などの相互の関係にあわせて、最も適した形で、利他的な行動と利己的な行動を取る割合を持つ遺伝子が、結果的に生き残っている、という理屈。
なるほどと思わされました。

アリやハチなどの社会性昆虫について

上記の血縁淘汰とも関連しますが、社会性昆虫は本当に興味深い生き物なんですね。
改めて実感。

所謂「女王」のみが生殖・出産するこれらの昆虫では、その他のワーカー(働きアリ・働きバチ)は全てメスで、女王が生んだ卵(=ワーカー達の妹にあたる)の世話をするためだけに生きている。
これは「女王」がメスを生む際の受精の仕組みが他の生物とは異なっているためで、(面倒なので色々な計算を省くと)ワーカー達の姉妹間の遺伝子の血縁度は通常の生物の兄弟姉妹の場合(50%)とは違い、75%になるためらしい。

つまり、ワーカーたちは、遺伝子の観点では50%しか近くない自分の子供を生んで育てるより、女王が生んだ75%近い遺伝子を持つ姉妹を育てたほうが得だ、という結論になるとのこと。

何ていうか、所謂「生命の神秘」みたいなものも、簡単な算数によって、神秘じゃなく理屈で説明できてしまえるところが凄いなぁ、と。
もちろん、こういう「遺伝子」という仕組みが存在すること自体が「神秘」なんですが。

新たな自己複製子「ミーム」

「ミーム」という言葉は、本書を読む前から何度も聞いたことがありました。
Web業界では、一時期ブログ界やmixiなんかで流行った「○○バトン」とか、チェーンメールとか、その辺の「どんどん増殖していく情報」を指して「ミーム」と呼ぶことがありますね。

この「ミーム」という言葉は、本書が初出だったんですね。恥ずかしながら、知りませんでした。(なんかの遺伝子関連の本が初出だとか聞いたなー、程度の認識でした......)

地球に生命が誕生して以来、何千万年、何億年、何十億年という長い時間をかけて、遺伝子(ジーン)は進化してきたわけですが、地球に人間が誕生して以来、ほんのわずかの間に、人間はそれまでの生物の進化のスピードとは比較にならない、とてつもない速さで「進化(進歩?)」していったわけですよね。
その原動力が、人間の脳が生み出した「言葉」によって現れることになった「ミーム」だった、というような感じでしょうか。

今後も人間の生み出した「文化」は凄まじいスピードで進化していくわけで、インターネットというインフラが現れたことが、さらにそれに拍車をかけるんでしょうね。

僕ら人間の場合、「ジーン(遺伝子)」を残すためだけではなく「ミーム」を残すために、一生を費やすことができるわけです。
もしも一生子供を生めない人でも、素晴らしい文学を遺すとか、音楽を遺すとか、研究成果を遺すとか、あるいは生き様そのものが後世の人々にとって偉大な遺物になったりだとか、そういった形で何かを遺すことができる。
こんなことが可能な人間というのはとんでもなく凄い生き物であって、その「人間」という種族に生まれて来れたことが、本当に素晴らしいことなんだなぁ、なんてことを思いました。

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