Laravel 13のキューとキューワーカー入門:Apache環境で本番運用する方法
作成日:2026.08.16
Laravel 13でJobをキューへ登録する方法から、queue:listenとqueue:workの違い、--timeout=0の挙動までを解説します。Linux上のApache環境でWeb処理とキューワーカーを分離し、Supervisorでワーカーを常駐・再起動させる構成を中心に、Nginxやcronとの関係、デプロイ時のqueue:restartも整理します。
目次
Laravelでは、CSVの読み込みやメール送信など、Webリクエストの中で実行すると時間がかかる処理をキューへ登録できます。
ただし、ジョブをキューへ登録しただけでは処理は実行されません。キューを監視してジョブを取り出すキューワーカーを起動しておく必要があります。
今回は、Laravel 13のキューワーカーについて、ローカル開発時の起動方法と、Linux上のApache環境へデプロイした後の動かし方を確認します。Nginxでもキューワーカーの考え方は同じですが、Webサーバーの設定例はApacheをメインにします。
Laravel 13の環境構築や画面表示については、以前のWindows 11でLaravel 13を始める記事で説明しました。今回はその続きとして、Webリクエストとは別に動く処理を追加します。また、MailpitでLaravelのメール送信を確認したメール送信の記事でもキュー送信に少し触れていますが、ここではキューワーカーの起動とデプロイ後の運用を中心に扱います。
前提
今回の前提環境は以下の通りです。
- ローカル環境: Windows 11、PowerShell
- デプロイ先: Linux系OS
- Webサーバー: Apache HTTP Server
- PHP実行環境: PHP-FPMおよびPHP CLI
- Laravel Framework: 13.x
- PHP: 8.3以上
- プロセス監視: Supervisor
Laravel 13.xのサーバー要件には、PHP 8.3以上と、Ctype、cURL、DOM、Fileinfo、Mbstring、OpenSSL、PDO、Session、Tokenizer、XMLなどの拡張が含まれます。実際に使用するLinuxディストリビューションやPHPのパッケージ構成は環境によって異なるため、デプロイ前にLaravelのデプロイメントガイドでも確認してください。
ApacheのPHP-FPM連携やTLS証明書の設定は、すでに完了しているものとします。この記事では、Laravelアプリケーションとキューワーカーをどのように動かすかに範囲を絞ります。
キューとキューワーカーの役割
通常のWebリクエストでは、ブラウザからのリクエストを受け取ると、その処理が完了してからレスポンスを返します。処理の中で大きなファイルを読み込んだり、外部APIへ接続したりすると、レスポンスを返すまでに時間がかかります。
キューを使う場合は、Webリクエストの中で時間のかかる処理を直接実行せず、処理内容をジョブとしてキューへ登録します。リクエスト側は登録を終えた時点でレスポンスを返し、別のキューワーカーがキューからジョブを取り出して処理します。
ブラウザ
|
v
Apache + PHP-FPM -- ジョブをキューへ登録 --> キューの保存先
|
v
Supervisor -- queue:work
ApacheとPHP-FPMはWebリクエストを処理します。一方、キューワーカーはPHP CLIで動作する別のプロセスです。Apacheが動いているだけでは、キューへ登録されたジョブは処理されません。Laravelのキュー接続やワーカーについては、Laravel公式のキューに関するドキュメントにも説明があります。
データベースキューを準備する
Laravelには、データベース、Redis、Amazon SQSなど複数のキュー接続が用意されています。今回は外部のキューサービスを追加せずに確認できるよう、データベースキューを例にします。
まず、プロジェクトの.envでキュー接続を確認します。
QUEUE_CONNECTION=database
データベースキューでは、ジョブを保存するjobsテーブルが必要です。プロジェクトにキュー用のMigrationがない場合は、次のコマンドで作成します。
php artisan make:queue-table
php artisan migrate
新しいLaravelプロジェクトには、キュー用のMigrationが最初から含まれている場合があります。その場合は、同じMigrationを重複して作成せず、database/migrationsを確認してからphp artisan migrateを実行します。
QUEUE_CONNECTIONがsyncになっている場合、ジョブはキューへ保存されず、その場で実行されます。キューワーカーの動作を確認するときは、現在のキュー接続が意図したものになっているか確認してください。
Jobを作成してキューへ登録する
次に、キューへ登録されたメッセージをLaravelのログへ出力するJobを作成します。
php artisan make:job WriteQueueLog
作成されたapp/Jobs/WriteQueueLog.phpを、次のように編集します。
<?php
namespace App\Jobs;
use Illuminate\Contracts\Queue\ShouldQueue;
use Illuminate\Foundation\Queue\Queueable;
use Illuminate\Support\Facades\Log;
class WriteQueueLog implements ShouldQueue
{
use Queueable;
public function __construct(
public string $message,
) {}
public function handle(): void
{
Log::info('キューのJobを処理しました', [
'message' => $this->message,
]);
}
}
ShouldQueueを実装したJobは、通常のメソッド呼び出しとは異なり、dispatchメソッドで実行を依頼するとキューへ登録されます。ここでいう「ディスパッチ」は、Jobをキューへ送る処理のことです。handleメソッドは、キューワーカーがJobを取り出したときに実行されます。
今回はWeb画面にテスト用のURLを追加せず、TinkerからJobを登録します。
php artisan tinker
App\Jobs\WriteQueueLog::dispatch('キューの動作確認');
データベースキューを使用していれば、この時点ではhandleメソッドはまだ実行されません。jobsテーブルへジョブが登録され、キューワーカーが取り出すのを待っている状態です。
ローカルでキューワーカーを起動する
ローカルでキューワーカーを起動するには、プロジェクトのルートディレクトリでqueue:workを実行します。
php artisan queue:work
queue:workは、キューへ登録されたJobを処理し続ける長時間実行のコマンドです。先ほど登録したJobが処理されると、storage/logs/laravel.logへログが出力されます。
1件だけ処理して終了したい場合は、--onceを指定できます。
php artisan queue:work --once
キューワーカーを起動したままコードを変更した場合、queue:workは起動時に読み込んだアプリケーションの状態を保持するため、変更内容を自動的には読み込みません。ローカル開発でコード変更を反映しながら確認したい場合は、queue:listenを使う方法もあります。
php artisan queue:listen --tries=1 --timeout=0
queue:listenは、Jobごとにアプリケーションを読み込み直せる代わりに、queue:workより効率が低いコマンドです。開発時の動作確認には便利ですが、本番環境の常駐ワーカーには、通常queue:workを使います。両コマンドの違いは、Laravel公式のキューに関するドキュメントで確認できます。
--triesと--timeout
--triesは、Jobを何回まで試行するかを指定するオプションです。--timeoutは、1回のJob処理を何秒まで許可するかを指定します。
--timeout=0と指定した場合は、0秒でタイムアウトするのではなく、Jobの実行時間によるLaravelのワーカーからの強制終了を無効にします。ただし、retry_afterの時間を超えると、処理中のJobが再取得される可能性があるため、本番環境ではJobの想定実行時間に合わせてタイムアウト値を設定します。
php artisan queue:work --tries=3 --timeout=60
タイムアウト値は、キュー接続のretry_afterより短くする必要があります。タイムアウト値の方が長いと、元のJobがまだ処理中なのに再試行され、同じJobが二重に処理される可能性があります。
Laravel 13の開発用devコマンドでは、既定のキュープロセスとしてqueue:listen --tries=1 --timeout=0が使われます。これは開発用の構成なので、これを本番環境の推奨設定としてそのまま使用しないようにします。
php artisan devとcomposer run devの違い
Laravel 13には、ローカル開発に必要な複数のプロセスをまとめて起動するphp artisan devコマンドがあります。詳しくはLaravel公式のArtisan Consoleドキュメントを参照してください。既定では、次のプロセスを同時に起動します。
- PHP開発サーバー
- キューワーカー
- ログ表示
- Viteによるアセットの監視
Laravelの標準的なプロジェクトでは、Composerのdevスクリプトからこの開発処理を起動できます。プロジェクトを作成した直後であれば、Laravel公式のインストールガイドにあるように、次のコマンドを実行します。
npm install
npm run build
composer run dev
php artisan devがLaravel側のArtisanコマンドなのに対し、composer run devはプロジェクトのcomposer.jsonに定義されたComposerスクリプトを実行するコマンドです。標準構成では、ComposerスクリプトからLaravelの開発用プロセスを起動しますが、プロジェクトによってスクリプトの内容は変更できます。
Laravel 13.xの現行ドキュメントでは、php artisan devの実行にNode.js 22.13以上が必要とされています。Windowsではプロセス管理に別のパッケージが使われるため、node --versionとプロジェクトのpackage.jsonも確認してください。
これらはローカル開発を便利にするためのコマンドです。本番環境でWebサーバー、ログ表示、Vite、キューワーカーを一つのターミナルから起動し続ける用途には使いません。
ApacheでLaravelを公開する
ここからは、Linux上のApacheへLaravelアプリケーションを配置する例を確認します。Laravelのプロジェクト全体をWeb公開するのではなく、公開ディレクトリをpublicに限定します。
例えば、アプリケーションを次の場所へ配置したとします。
/var/www/example.com/current
ApacheのVirtualHostでは、DocumentRootをプロジェクトのpublicへ向けます。以下は設定の最小例です。PHP-FPMとの接続方法やモジュール名は、LinuxディストリビューションとPHPのバージョンに合わせて調整してください。Apacheのリクエスト書き換えについては、Apache HTTP Serverのmod_rewriteドキュメントも参照してください。
<VirtualHost *:80>
ServerName example.com
DocumentRoot /var/www/example.com/current/public
<Directory /var/www/example.com/current/public>
AllowOverride All
Options -Indexes
Require all granted
</Directory>
ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/example-error.log
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/example-access.log combined
</VirtualHost>
Laravelのpublic/.htaccessを利用する場合は、対象ディレクトリでAllowOverrideが許可されている必要があります。また、ApacheがPHP-FPMへPHPファイルを渡せる状態になっていることも確認します。
Laravelの公式デプロイメントガイドでも、アプリケーションの入口をpublic/index.phpへ限定するよう案内されています。プロジェクトのルートをそのまま公開すると、.envや設定ファイルなどが外部から参照される危険があります。
Laravelの書き込み権限
Laravelは、ログやキャッシュをstorageへ書き込みます。また、起動時にbootstrap/cacheへファイルを作成することがあります。ApacheのPHP-FPMプロセスと、Supervisorで起動するキューワーカーが、必要なディレクトリへ書き込める権限を持つようにします。
実行ユーザーやグループはサーバー構成によって異なります。www-dataを前提に固定せず、PHP-FPMの実行ユーザー、Supervisorのuser設定、デプロイユーザーの関係を確認してください。
Supervisorでキューワーカーを常駐させる
ApacheがWebリクエストを処理していても、キューワーカーは自動的には起動しません。Linuxの本番環境では、キューワーカーをプロセス監視ツールから起動します。
ここではSupervisorを使います。Laravel公式のキューワーカー設定例でもSupervisorが使われています。Ubuntu系の環境でパッケージを導入する例は次の通りです。パッケージ管理方法は、利用するLinuxディストリビューションに合わせて変更してください。
sudo apt-get install supervisor
Supervisorの設定ファイルを/etc/supervisor/conf.d/laravel-worker.confとして作成します。
[program:laravel-worker]
process_name=%(program_name)s_%(process_num)02d
command=/usr/bin/php /var/www/example.com/current/artisan queue:work --sleep=3 --tries=3 --max-time=3600
directory=/var/www/example.com/current
autostart=true
autorestart=true
stopasgroup=true
priority=999
user=www-data
numprocs=1
redirect_stderr=true
stdout_logfile=/var/log/supervisor/laravel-worker.log
stopwaitsecs=3600
commandのPHPパス、Laravelプロジェクトのパス、userは、実際の環境に合わせて変更します。numprocs=1は1プロセスの例です。処理量に応じて増やす場合は、同じキューを複数のワーカーが処理することを前提に、Jobの重複実行や外部サービスの制限も確認します。
--max-time=3600は、ワーカーを1時間処理した後に終了させる指定です。Supervisorのautorestartによって再起動されるため、長時間動作したプロセスを定期的に入れ替えられます。長時間のJobを扱う場合は、stopwaitsecsが処理時間より短くならないようにします。
設定を読み込み、ワーカーを起動します。
sudo supervisorctl reread
sudo supervisorctl update
sudo supervisorctl start "laravel-worker:*"
sudo supervisorctl status
statusでRUNNINGと表示され、ログファイルへワーカーの出力が記録されていれば、Supervisorからキューワーカーを起動できています。
Supervisorの設定は、Laravel公式のキューに関する資料にも例が掲載されています。実際には、Laravelプロジェクトの実行ユーザー、ログローテーション、プロセス数、停止待ち時間を環境に合わせて調整してください。
デプロイ後にワーカーを再起動する
queue:workは長時間実行されるため、起動後に更新したPHPコードを自動では読み込みません。新しいコードをデプロイした後は、ワーカーを再起動する必要があります。
Laravelでは、現在処理中のJobが終わってからワーカーを終了させるqueue:restartを実行できます。
cd /var/www/example.com/current
php artisan queue:restart
Supervisorがautorestart=trueでワーカーを監視していれば、ワーカーが終了した後に新しいプロセスを起動します。デプロイの一例は次のようになります。
cd /var/www/example.com/current
composer install --no-dev --optimize-autoloader
php artisan migrate --force
php artisan optimize
php artisan queue:restart
実際のデプロイでは、リリースディレクトリを切り替える方式や、メンテナンス時間を設ける方式などがあります。上のコマンドをそのまま全ての環境へ適用するのではなく、コードの配置、環境変数、データベースMigration、キャッシュ、ワーカー再起動の順序を採用しているデプロイ手順へ組み込んでください。
queue:restartはキャッシュへ再起動の合図を保存します。キャッシュ接続が正しく設定されていないと、ワーカーへ合図が届かない場合があります。
cronとLaravel Schedulerの違い
cronは、指定した時刻や間隔でコマンドを起動する仕組みです。Laravel Schedulerを使う場合は、Laravel公式のタスクスケジューリング資料にあるように、cronからLaravelのschedule:runを毎分実行します。
* * * * * cd /var/www/example.com/current && /usr/bin/php artisan schedule:run >> /dev/null 2>&1
Laravelはschedule:runの実行時刻を確認し、アプリケーションに定義されたスケジュールのうち、実行すべき処理だけを起動します。
一方、キューワーカーはキューへ登録されたJobを継続的に取り出すプロセスです。キューワーカーをcronで毎分起動すると、ワーカーが重複して起動したり、終了しないプロセスが残ったりする可能性があります。キューワーカーの常駐にはSupervisorなどのプロセス監視を使い、cronはSchedulerの実行に使う、というように役割を分けます。
スケジュールされた処理からJobを登録する構成もあります。その場合は、SchedulerがJobを登録する役割、キューワーカーがJobを処理する役割として、それぞれの実行状態を確認します。
Nginxを使う場合
Nginxを使う場合も、キューワーカーの起動とSupervisorの設定は基本的に同じです。変更するのは、WebサーバーのVirtualHostに相当するNginxのserver設定、PHP-FPMへの接続方法、ログ設定などです。
NginxのrootもLaravelプロジェクトのpublicへ向けます。Nginxの設定例は、Laravel公式のデプロイメントガイドに掲載されています。ApacheとNginxのどちらを使う場合も、プロジェクトのルートディレクトリ全体を公開しない点は共通です。
キューが処理されない場合の確認
QUEUE_CONNECTIONを確認する
QUEUE_CONNECTION=syncの場合は、Jobがキューへ保存されず、その場で処理されます。データベースキューを使う場合は、QUEUE_CONNECTION=databaseと、jobsテーブルを確認します。
環境変数を変更した後に設定キャッシュが残っている場合は、設定を確認してから必要に応じてキャッシュをクリアします。
php artisan config:clear
Supervisorの状態とログを確認する
Supervisorからワーカーが起動しているか確認します。
sudo supervisorctl status
sudo tail -f /var/log/supervisor/laravel-worker.log
ワーカーが停止している場合は、SupervisorのログとLaravelのstorage/logs/laravel.logを確認します。Jobの例外、PHP拡張の不足、環境変数、データベース接続、ファイル権限などを順番に切り分けます。
失敗したJobを確認する
失敗したJobをデータベースへ保存する構成では、queue:failedで一覧を確認できます。
php artisan queue:failed
原因を修正した後、対象のJobを再試行する場合は、一覧に表示されたIDを指定します。
php artisan queue:retry <job-id>
Jobが何度も失敗する場合は、単に再試行を繰り返すのではなく、例外の内容、入力データ、外部サービスの応答、Jobの冪等性を確認してください。
注意点
- ApacheやNginxが起動していても、キューワーカーが起動しているとは限らない。
- Laravelプロジェクトのルートではなく、
publicだけをWeb公開する。 queue:listen --tries=1 --timeout=0は開発用の構成として扱い、本番用の設定へそのまま流用しない。--timeoutとretry_afterの関係を確認し、同じJobが二重に処理される設定を避ける。- Supervisorの実行ユーザーが、Laravelのログ、キャッシュ、キュー接続へアクセスできることを確認する。
- Jobへ個人情報や秘密情報をそのまま渡さず、キューの保存先やログへ意図しない情報が残らないようにする。
- 本番の
.env、Supervisor設定、Apache設定へ、パスワードやAPIキーを直接記述して公開しない。
まとめ
Laravelのキューは、時間のかかる処理をWebリクエストから切り離すための仕組みです。Jobをキューへ登録した後、キューワーカーがJobを取り出して処理します。
ローカル開発では、queue:listenやcomposer run devを使って動作を確認できます。ただし、本番環境ではApacheやPHP-FPMとは別にqueue:workを起動し、Supervisorなどで常駐管理します。
デプロイ後はqueue:restartでワーカーへ新しいコードを読み込ませ、cronはLaravel Schedulerのschedule:run用に使います。Webサーバー、キューワーカー、プロセス監視、Schedulerを別の役割として整理すると、LaravelをApache環境へデプロイした後の動作を切り分けやすくなるかと思います。
奈良市を拠点に、27年以上の経験を持つフリーランスWebエンジニア、阿部辰也です。
これまで、ECサイトのバックエンド開発や業務効率化システム、公共施設の予約システムなど、多彩なプロジェクトを手がけ、企業様や制作会社様のパートナーとして信頼を築いてまいりました。
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