GmailのDMARCレポート(XML形式)の読み方ガイド:基本設定から解析まで
作成日:2025.06.15
Gmailから送信されるDMARCレポートのXMLデータを例に、メール認証の仕組みや設定方法、そしてレポートの読み方について解説しています。SPFやDKIMとの連携を踏まえたDMARCの基本概念から、具体的なポリシー設定、実際のレポートの読み方などを説明します。メール送信環境の改善やセキュリティ向上の参考に。
DMARC とは
DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance)は、メールの送信ドメインが正当なものであるかを検証するための仕組みです。SPF(Sender Policy Framework)やDKIM(DomainKeys Identified Mail)と連携して、メールの認証とレポートを行います。
DMARC の設定方法
DMARC を設定するには、DNS に以下のような TXT レコードを追加します。
v=DMARC1; p=reject; rua=mailto:postmaster@example.com, mailto:dmarc@example.com; pct=100; adkim=s; aspf=s
※参考: DMARC を設定する - Google Workspace 管理者 ヘルプ
この例では、ポリシー(p
)が reject
に設定されており、レポートの送信先(rua
)が指定されています。pct
は適用率、adkim
と aspf
はそれぞれ DKIM と SPF の整合性を厳格にチェックする設定です。
- v
- DMARC のバージョンを指定します。現在は「DMARC1」が一般的です。
- p
- ポリシーを指定します。
none
(レポートのみ)、quarantine
(隔離)、reject
(拒否)のいずれかを設定します。 - rua
- 集計レポートの送信先メールアドレスを指定します。複数指定する場合はカンマで区切ります。
※ここで指定するメールアドレスは、DNSを参照すれば誰でも確認できるため、公開しても問題ないメールアドレスを指定しましょう。 - pct
- ポリシーを適用するメールの割合を指定します。0〜100の整数で、デフォルトは100です。
- adkim
- DKIM の整合性チェックの厳格さを指定します。
s
(strict)またはr
(relaxed)を設定します。 - aspf
- SPF の整合性チェックの厳格さを指定します。
s
(strict)またはr
(relaxed)を設定します。
Google のドキュメントによると、
DMARC の使用を開始するときは、ポリシー オプション(p
)をnone
に設定することをおすすめします。ドメインからのメールが受信サーバーによってどのように認証されるのかがわかってきた段階で、ポリシーを更新します。ある程度の期間を設けて、受信側のポリシーをquarantine
(orreject
) に変更します。
とのことなので、最初は p=none
で運用を開始し、様子を見て問題がなければ徐々にポリシーを厳格にしていくのが良いでしょう。
rua
にメールアドレスを指定すると、DMARC レポートが指定したメールアドレスに送信されます。これにより、メールの認証状況を確認できます。
Gmail では、rua
に指定したメールアドレスに DMARC レポートが送信されます。レポートは XML 形式で、メールの認証結果やポリシーの適用状況が含まれています。
DMARC の確認方法
DMARC が設定されているか確認するには、 nslookup
コマンドを使用して、以下のように DNS レコードを確認します。
nslookup -type=TXT _dmarc.example.com
DMARC レポートの読み方
以下は、Gmail から送られてくる DMARC レポートの例です。三つのパートに分けて説明します。
<version>1.0</version>
<report_metadata>
<org_name>google.com</org_name>
<email>noreply-dmarc-support@google.com</email>
<extra_contact_info>https://support.google.com/a/answer/2466580</extra_contact_info>
<report_id>1234567890</report_id>
<date_range>
<begin>1749686400</begin>
<end>1749772799</end>
</date_range>
</report_metadata>
最初の部分は、レポートのメタデータを含んでいます。以下の情報が含まれています。
- version
- DMARC レポートのバージョンを示します。
- org_name
- レポートを生成した組織の名前です。
- レポートに関する問い合わせ先のメールアドレスです。
- extra_contact_info
- 追加の連絡先情報やサポートページへのリンクです。
- report_id
- レポートの一意な識別子です。
- date_range
- レポートがカバーする期間の開始と終了日時(UNIXタイムスタンプ)です。
続いてのパート。
<policy_published>
<domain>abe-tatsuya.com</domain>
<adkim>r</adkim>
<aspf>r</aspf>
<p>none</p>
<sp>none</sp>
<pct>100</pct>
<np>none</np>
</policy_published>
次の部分は、DMARC ポリシーの公開情報を含んでいます。以下の情報が含まれています。
- domain
- DMARC ポリシーが適用されるドメイン名です。
- adkim
- DKIM の整合性チェックの厳格さ(
s
またはr
)です。 - aspf
- SPF の整合性チェックの厳格さ(
s
またはr
)です。 - p
- ポリシー(
none
,quarantine
,reject
)です。 - sp
- サブドメインに対するポリシー(
none
,quarantine
,reject
)です。 - pct
- ポリシーを適用するメールの割合(0〜100)です。
- np
- DNSで存在しないサブドメインに対するポリシー(らしい)。
そして最後のパート。
<record>
<row>
<source_ip>192.168.0.1</source_ip>
<count>1</count>
<policy_evaluated>
<disposition>none</disposition>
<dkim>pass</dkim>
<spf>pass</spf>
</policy_evaluated>
</row>
<identifiers>
<header_from>abe-tatsuya.com</header_from>
</identifiers>
<auth_results>
<dkim>
<domain>abe-tatsuya.com</domain>
<result>pass</result>
<selector>default</selector>
</dkim>
<spf>
<domain>abe-tatsuya.com</domain>
<result>pass</result>
</spf>
</auth_results>
</record>
最後の部分は、各メールの認証結果を含むレコードです。<record>
タグで囲まれた部分が一つの認証結果を表しています。以下の情報が含まれています。
- source_ip
- メールの送信元IPアドレスです。
- count
- この認証結果に該当するメールの数です。
- policy_evaluated
- 適用されたポリシーの評価結果です。
- disposition
- ポリシーの適用結果(
none
,quarantine
,reject
)です。 - dkim
- DKIM の認証結果(
pass
,fail
, など)です。 - spf
- SPF の認証結果(
pass
,fail
, など)です。 - identifiers
- メールの識別子情報を含みます。ここでは、
<header_from>
タグでメールヘッダーの From ドメインが示されています。 - auth_results
- 認証結果の詳細を含みます。DKIM と SPF の認証結果がそれぞれのドメインと結果とともに示されています。
このように、DMARC レポートはメールの認証状況を詳細に記録しています。
DMARC レポートの活用方法
DMARC レポートを活用することで、以下のようなことが可能になります。
- メールの認証状況を把握し、問題のあるメールを特定する。
- 不正なメール送信を防止するためのポリシーを調整する。
- メールの配信率を向上させるための改善点を見つける。
ここ数年よく言われる「Gmailに届かない問題」の多くは、DMARC ポリシーの設定ミスや認証の不備が原因であることが多いです。DMARC レポートを定期的に確認し、適切なポリシーを設定することで、メールの配信率を向上させることができます。
DMARC レポートは、メールの認証状況を把握するための重要なツールです。メール送信を行なう Webアプリケーションやサービスを運用している場合は、DMARC を設定し、レポートを定期的に確認することをおすすめします。

奈良市を拠点に、26年以上の経験を持つフリーランスWebエンジニア、阿部辰也です。
これまで、ECサイトのバックエンド開発や業務効率化システム、公共施設の予約システムなど、多彩なプロジェクトを手がけ、企業様や制作会社様のパートナーとして信頼を築いてまいりました。
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